第六章



「、!」

この暗闇の中、いつかは足を取られるものだと思っていた。突撃を回避した先で見計らったように飛び込んできた触手が間一髪地面に衝突、砂埃が舞い上がる。その次の瞬間には右足首を絡め取られてルーティは宙吊りに。

想像していた通り触手はルーティの体を大きく振り回すと壁に向かって放り投げた。ルーティは何とか空中で体を捻り壁を蹴り出して退避。直後に複数の触手が壁に突進するのだから冷や汗が滲む。けれど息つく間もなく触手は狙いを定め対するルーティは地面に片膝を付いて息を弾ませながら電撃を放つべく腕を突き出した。

「──!」

複数の青い光の矢が触手を弾く。

「ルーティ!」


この声は。……間違いない。


「──ピット!」

思わぬ助っ人にルーティは目を見開いた。何せ少し前まで戦っていた相手である。

「やっと見つけた!」

そんな此方の心情など知る由もなく白い羽根を舞わせて降り立つその天使は立ち塞がる触手の群れを睨み付ける。

「どうやって」
「パルテナ様に転送してもらったんだ」

そう話している間にピットの背の羽根が青白い光を灯した。──飛翔の奇跡である。

「説明は後にしよう!」

差し出された手をルーティが頷いて握った瞬間ピットの背の羽根の光がより一層強く瞬いた。二人を中心にして波紋のように風が巻き起こり──飛び立つ。光の女神の導きによりぐんぐん昇っていき壮絶な速さに触手も追い付けない。

「凄い」

ルーティは小さく呟いた。
 
 
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