第一章



人差し指の先から──光が直線に伸びる。躱すべく身構えたがそれは真っ直ぐ硝子板へ向かうと反射して。急ぎ目で追いかけるも自分たちの位置を掠めることなく光は尾を引きながらまた別の硝子板を反射する。一体何処を狙っているのだと眉を寄せたがよくよく見れば光の通った場所には光の線が消えず残されている。

「……!」

此方が意図に気付いたと見るや否やマスターは浮かべた笑みを満足げに深めた。

「ウルフ!」

不意に掠めた光の一線は衣服を焼いて容赦なく肌の表面に切り傷と火傷を仕上げる。

「──惨めに逃げ惑うがいい」

空中では自由に身動きできない──もっと早く意図に気付くべきだった。際限なく増える反射板が次に光をどちらに反射するのか一切此方に読み取らせない。咄嗟に顔を反らせば既の所で髪がはらりと落ちた。ウルフも己が持つ小型の反射板を展開させて反射を試みるが勝手が違うのか光は素知らぬ顔ですり抜けてしまう。

「くっ」

何でもいい。打つ手はないのか。

「!」

救いの手を望む心の声に──応えるようにして地上から金色の雷が放たれる。それは一瞬でもマスターの視界を妨げてルーティとウルフを見失わせた。物の序でとばかりに反射板の一部が砕かれるとマスターは目を見張りながら。

……右手を構える。
 
 
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