第六章
次の瞬間。
ずるずると何かを引き摺る音が聞こえてルーティは背筋が凍るのを感じた。あの時と同じ──体の表面を這うような気味の悪い気配。
即座に構えて警戒を走らせて──蠢く影を捉え雷を放つ。青い閃光が暗闇の中では一層明るく鳴き声を上げながらその何かに突撃した。
「ぁ」
その影がぐったりと横たわると途端にダーズは頭を抱えながら震え始める。
「……ダーズ?」
呼吸に乱れが生じて。
「いやだ」
瞳を揺らす。
「お兄様の光がボクをぼくのお兄様がおれを」
ざわざわざわざわ。
「おれがオレがお兄様をお兄様の光がぼくをボクがお兄様をぼくがオレがおれが」
愛してる。
「……さなきゃ」
ダーズは己の体を抱き締めながら頭を擡げる。
「お兄様を殺さなきゃ」
けけけ。けけけけけ。
「、ウルフなら」
躊躇うな。いざって時は迷わず行動しろ。
「くっ」
パートナーの口癖を思い出す。
何かしらのトリガーを引いてしまったからには彼を落ち着ける事が先決だろうが何より地上で無事を祈っているであろう皆に自分が五体満足でこの身を返さなければ。その為には。
──逃げるしかないッ!