第六章



お兄、……様?

「もしかして」

ルーティは恐る恐る訊ねる。

「……お金持ちの家の子?」

ダーズはきょとんと。

「お金持ち」


……空気が固まった気がする。


「うーん」

ダーズはパッと離れるとゆらゆらと肩を揺らしながら明後日の方向を見て。

「確かになにかに困らないくらいには恵まれた環境だったかも」

そう言って。再び背中を向けて歩き出す。

「温かいご飯も湯浴みも寝床も安心も安全も」

大きく袖を振って歩きながら。

「全部、当たり前に保証されていて」

ダーズは語る。

「お兄様も居たから」

ルーティはその後ろを歩く。

「なにも怖くなかった」


何かあったのかな。

この子は。心に闇を抱えている気がする。


「その」

空気を和らげたい一心で。

「お兄様って」

ルーティは口を開く。
 
 
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