第六章



目を細めて笑えば、八重歯が可愛らしく。

「君は」

その人は無邪気に答える。

「ダーズ」


あの時。何か別の生き物によって谷底へ引き摺り込まれた自分が無傷だったのはこの人のお陰だったのだろうか。身なりはお世辞にも整っているものとは思えないし見る限り体の線は細く衝突なんてしようものならその身が無事であるはずもないような気がしないでもないのだが。

「ルーティ」

ご心配なく。名前は教えたのだ。

「外に出たいんだよね」

ダーズは両手を広げながらその場で回ると。

「ぼくが案内してあげる」

何だか。ころころと口調や一人称が変わったり変わった子だなあ……

「こっちだよ」

疑い警戒するのも当然大事だがそれで話の進展が見られないのなら意味はない。歩き出すダーズの後ろをルーティは一定の距離を保ちながらついていくことにした。足下は暗くて見えないが地面を踏んだ感じ凸凹としている。であればここはやはり間違いなく谷底で光さえ届かない程に深い場所ということか。

「ダーズは」

ルーティは恐る恐る質問を投げかける。

「どうしてここに?」

そもそも。

キーラの攻撃による影響は受けなかったのか。

「おれ」

ダーズは答える。

「光が嫌いだから」
 
 
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