第六章



ルーティはびくりと肩を跳ねて固まった。

背後ではなく目の前に居たのだ。

「ふふ」

手を後ろに回して悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「こんにちは?」


褐色の肌に映える水色の眸は常時見開かれていて向かって左側は長い前髪に隠れている。髪は漆黒で後ろ髪は緩く三つ編みにして纏めてありその内側には紫色の世界を揺らめかせていて。身に纏うゆったりとした衣はぼろぼろで何故か裸足という不自然さ。

「えっと」

ルーティは思わずたじろぐ。その少年とも少女とも性別の見分けのつかないただ幼さを残した風貌のその人はルーティが応えるのに躊躇って後退するのに従って距離を詰める。

「お前」

その人はくん、とルーティの胸元を嗅いで。

「陽だまりの匂いがする」

疑問符を幾つも頭の上に浮かべて固まっているとその人はようやく離れて後退した。ぐりんと首を可愛げもなく傾けて笑み。

「あーあ」


くふ、……くふふふ。


「あの」

肩を震わせて嗤うその人に話しかける。

「ここは」
「上から落ちてきたんだよ」

肩を竦めて見上げながら。

「おれの真上に」

真上。……真上に!?

「えっあっ」

ルーティはおろおろとしながら。

「だ、大丈夫……?」
「痛くなかったらしいよ」

なんでそんな客観的なんだ。
 
 
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