第一章
親指と中指の腹を擦り合わせて──弾く。
「──ッ!」
先程と同じく指を鳴らす音に合わせてその人の姿形が失せたかと思えば。次の瞬間には巨大な白手袋の姿に変貌を遂げてウルフとルーティを空に向かって平手打ちで弾き飛ばしたのだ。
そう──これこそがこの世界の主たる創造神と破壊神を語る彼らのもうひとつの姿。
どういった所以かもはや問い質す気にもなれやしないが彼らにとっては人の姿も白手袋の姿もどちらも真であるのだろう。その姿で街中を出歩くなど有り得ないにしてもこうして戦闘時に思わぬタイミングで変化されてしまったのでは攻防の間合いも何も全て変わってしまう結果となり立ち回りをも変えなければいけなくなる。
彼らも頭が回るのだからまさか気まぐれで変化しているという話でもない。本当に厄介な──冷静に解説をしている場合ではないか。視界いっぱいに広がる青空の中に半透明な硝子板が浮かび上がるのを見つけて現実に引き戻される。はっとルーティが振り向くといつの間にか人の姿に戻っていたマスターが視線に気付いてひらひらと手を振り返し、にっこりと。
「来るぞ!」
ファンサービスに見惚れている場合ではないというのに自分ときたら。それでもウルフの呼び掛けのお陰でようやく自分の置かれている危機的状況に気付いた。硝子板は視界に捉えたそれ以外にも幾つか浮かんでいるようでマスターは己の人差し指に口付けると。差し出して──