第五章
多愛ない会話を交わしながら歩く。
降り注ぐ光が全て平等に影も落とさず温もりを与えられたなら。恍惚と語られたその言い分は果たして正義となるか悪となるか。自分の中ではっきりとした答えが文章化しないまま一行は半ば強制的に足を止めることになる。
「……うわ」
カービィがそんな声を漏らすのも無理もない。
一行は断崖絶壁を前に立ち尽くしていた。谷は深く底は窺えない。森林都市と呼ばれる土地を歩いていたはずなのにいつの間にか木々の群れを抜けて干ばつの大地が視界いっぱいに広がっている。この光景こそキーラの過ごした時代の当たり前の景色なのだろうか。
「降りるのか?」
「まさか」
クレイジーはそう返して空を睨みつける。
「僕たちが用があるのは上の方だし」
それもそう。ここが断崖絶壁だったとして何も不利に働くことはないのだ。
「分かってるけど」
カービィは呆れ気味に振り返って。
「どうやって」
言いかけた、その時である。
「、!」
展開した薄青の防壁が誰が気付くよりも素早く攻撃の全弾を防いだ。攻撃の発生場所を視線で追えば複数の白が此方を見つめている。
「ピット……!?」
ルーティは思わず声に出した。驚くのも無理もない──双眸を赤く染めたその人はなんと一人ではなく複数いたのである。この中の一人が本物だったとして残りは確実に複製されたもの。
「見事です」
彼らを率いるようにして天から舞い降りたのはパルテナである。マスターは小さく息をついて軽く手を薙ぎ防壁を解除すると見据えて。