第五章
……何を言ってるんだか。
そういえば。こうして散策の為に歩いているが先程からマスターとクレイジーは一言も話さない。そりゃまあ口を開いたところで彼らときたら毒づく悪癖があるので空気が悪くなるよりはマシなんだろうけど。
「ふたりとも」
わざと歩く速度を落とせば話に夢中である様子のラディスとカービィは先を歩いて。ルーティがその隙にマスターとクレイジーを振り返って声を掛けるとふたりはビクッと肩を跳ねた。
「父さんと話さないの?」
……だんまり。
それぞれ顔色を窺ったが物の見事に視線を逸らされてしまった。そういえば彼らも父の命日を覚えているくらいには思い入れとか罪悪感とか様々な感情を抱いているような節があったが。普段こそ自分は神様だのこの世界の主だの自負するノンストップクソガキなのに──
「おい」
ナレーションに突っ込むのは反則です。
「呑気だよね」
クレイジーは何処か自嘲気味に。
「どうせ今回のことが解決したらそいつもまた居なくなるのにさ」
……ああ。
そういうことだったのか。
彼らなりに自制しているのだ。再会は喜ばしくともこの状況に慣れてしまえばいずれやって来る別れを惜しまずにはいられないことだろう。であれば交流は最小限に期待は持たず本来ある気持ちを抑え込んで。……
「父さん!」
ルーティは咄嗟にマスターとクレイジーの腕をそれぞれ捕まえると振り返って。
「ふたりも話したいって!」