第五章



思わぬ再会を堪能すること数十分。しかしまあこんな時だというのにそれをあの双子が許してくれたというのが驚きだ。カービィはずびっと鼻を啜ってマスターを見遣る。

「てか力使って大丈夫だったの?」
「……ああ」

マスターは空に自身の右手を翳しながら。

「力が戻ってきている」
「ええ」

意外な展開。

「じゃあもうこの先楽勝じゃん」
「どうだろうな」

マスターは小さく息を吐く。

「神力の充てられる先が分散されなくなったということはあれの器が充分に満たされたという証明にもなる」

光の群れによる猛攻がまだ鮮明に瞼の裏に映し出される。回避のしようがないそれが対峙した際もう一度この身に降りかかるものだと思うと打開策を考えるまでもなく頭が痛くなる。光に灼かれたら最後先程の彼女たちのように恍惚と光の化身を崇める信者と成り果てるか容れ物を取り上げられて思念体として放り出されるか。

「そういえば」

ルーティは思い出したように。

「父さん。その姿は?」

十数年以上も前に亡くなっているのだから体がないというのもまあ納得がいくのだが。

「本人の容れ物ではないな」

マスターが答える。

「お前の部隊に属しているトレーナーが最初に選んだポケモンらしい」
「レッドのピカチュウってこと?」

ルーティはまじまじとラディスを見つめる。

「何か覚えてる?」

ラディスはうーんと唸って。

「記憶の始まりは空の上だった。自分でもよく分からないまま投げ出されていて次に気付くと今度は森の中にいた。故郷を懐かしんでいたらいやに急いでるピカチュウを見つけて──そこから先はなるがままといったところだな」

それにしても。ピチカとリムに不純物だ何だと追い回されていたピカチュウだがそれだけ敵視されるということはもしやあの時の光の猛攻を全て回避して生存していたのだろうか。

ポケモンに関する知識も実力も誰より上を行くレッドの元パートナーなのだ。それだけで何となく納得できてしまうのが恐ろしい。
 
 
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