第五章
最終的な判断は──クレイジーはマスターに目を向ける。マスターは集中する視線から逃れるように悩ましげに眉を寄せながら瞼を閉ざしていたがやがてゆっくりと息を吐き出すと。
「ここで手向けられた刺客に潰されるようでは本末転倒だからな」
そっと瞼を開いて足を踏み出す。その表情には少しばかり困惑も滲んでいるかのように窺えたがそれすら掻き消すかのように右目に青の光が灯り本来の神としての威厳を見せ付ける。
「、っ」
重力に押し潰されるかのような感覚。威圧感。ルーティは思わず一歩下がるもマスターは構う様子なく距離を詰めて右手をピカチュウの額に翳す。右手にぼんやりと青白い光が灯ると彼が神力を使って真偽を確かめたのだと悟る。
「マスター」
暫くしてその光が失せるとマスターは腕を下ろした。不安げに呼ぶルーティに一瞥くれてマスターは何処か恨めしそうに口を開く。
「久しぶりだな。……ラディス」
それこそが証明だった。
「父さんっ!」
ピカチュウ基ラディスが応えるよりも早くルーティは先程よりも強くその小さな体を抱き締めていた。ぐえっ、と蛙の潰れたような声が聞こえた気もするがそれも含めて彼らしい。
「……うっそじゃん」
カービィは前髪をくしゃりと掴む。
「本物とか」
笑っていいのやら泣いていいのやら。
「他の皆になんて説明すんの……」
有り得ないこと自体有り得ないなんて誰が言い出した話だろう。言い得て妙だが確かにそう。
「あはは」
神々がその座を奪い合う世界だ。
「あはははっ……」
今更じゃないか。
一度死んだ人間が帰ってくるなんてのは。