第五章
ルーティはじっとピカチュウを見つめた。その愛くるしい見た目からは当然のこと想像も付かないが同じ種である所以かその名前と姿をイコールで結び付けても違和感は感じなかった。
「……ああ」
ピカチュウは頷く。
「父さんだよ」
その瞬間。
胸の内から溢れかえるものを感じて。
「っ……父さん……!」
強く抱き締めるルーティを苦しいなどと言って突き放すはずもなかった。その小さな体であるが故両腕を回して抱き締められなくとも成長は感じられる。愛おしそうに目を細めながら胸に前足をそっと置いて「うん」と呟く。
「いやいやいやちょっと待って」
そんな感動的な場面に水を刺すように頭を抱えながらカービィが口を挟んだ。
「キーラの罠だって可能性もあるんでしょ? 簡単に信じていいわけないよね?」
酷く困惑している様子だが当然と言えば当然である。ラディスという男は確かに十数年前亡くなっていて奇跡的に会話が出来た場面も確かにあったがそれは神様の気まぐれというもので。今回のことだって括り的には神様の気まぐれにあたるのだろうがそれだってキーラの仕業なのだから罠だという可能性も捨てきれない。
「カービィ」
ルーティは訴えかけるような目を向けるが。
「いやいや普通になんとか言ってよ」
反してカービィは先程から口を閉ざして身守るばかりの双子に助けを求める。
「真偽を見抜くのはお得意でしょ」
ルーティは眉尻を下げながら視線を送った。
「マスター。……クレイジー」