第一章



白手袋纏う右手と左手が伸びる。

浮かべた笑みを深めて双子は口を揃える。


……Ready?


ぱちんと指を鳴らした──次の瞬間には僅かな土埃を残して双子の姿が失せる。負傷しているソニックとスネークを狙われたのではまずいとルーティは振り返ったが直後に鈍い音を聞いてすかさずそちらを見れば。

「ルフレ!」

相手が女性であるにも関わらず容赦のない重い拳の一撃にマークが振り返った時には遅く妹のルフレは呆気なく弾き飛ばされる。敵の先攻に急ぎ体勢を整えるべく魔導書を構えれば視界の端でそれを捉えたのであろう砂利を踏み込んで蹴り出したクレイジーが次の瞬間には目前に。

「おっそいなぁ」

風を切る音。

「──マーク!」

この短い時間に二人も──顔を顰めたがそれをいちいち構っていられる状況下でもない。

「おやおや」

その声は生じた隙を嘲笑うように。

「随分と余裕がお有りの様だ」

振り向きざまに拳を受け止めて睨みつける──まさか普段後衛に回るマスターが積極的に接近戦を仕掛けてくるものだと思わなかった。とはいえ相手は弟の破壊神と異なり攻撃自体はそう重くはない。頬に青の閃光を走らせ身体能力の底上げを図りながら拳を脇へ受け流して素早く回し蹴りを繰り出す──しかし流石の創造神といったところか身振り手振りも見せず展開した薄い青色の防壁によって攻撃を阻む。

「おっと」

……見切られた!

此方に注意が向いている今なら接近するウルフに気付かず攻撃を受けてくれるかと思えば死角からの蹴りの一撃を既の所で躱した──それもほんの少し体を反らしたというだけなのだから初めから見えていたと言っても過言ではない。

「相変わらず」

マスターは口角を吊り上げる。

「読みの浅いことだ」
 
 
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