第五章
──来る!
殺気を露に駆け出してきたリムの拳の一振りを一先ず受け流しながら足払い。思いのほかあっさり前方に崩れかかったところを情け容赦なくカービィが蹴りによる一撃を見舞う。
「っ!」
入れ替わるように飛び込んできたピチカは頬にぱちぱちと青の閃光を跳ねる。
「キーラ様は温かな光を与えてくれるの」
ルーティは蹴りを躱して次の拳を受け止める。
「──影の差した地面の冷たさを考えたことはある? 砂漠の夜だって海の底だって想像すらしたことないよね」
次にピチカが後方に飛びながら腕を払うと青い閃光が幾つかの鏃となって飛んできた。
「知らないことが問題じゃないの」
ルーティはその場から飛び退いて回避する。
「疑問に思うのが問題なの」
双眸の赤が尾を引いて。
「いつだって──疑問を投げかける側は自分が無知を晒していることに気付いていない。もしそんな疑問を抱くより前に豊かな光が海の底にまで温もりを届けていたら。砂漠の太陽が傾かなかったら。地面に影を落とさなかったら」
ピチカは頬を紅潮させながら笑う。
「不幸を乗り越えた先に幸福があるのではなく幸福だけが満ちていたなら!」
……狂っている。
「キーラ様が見てる」
彼女の周囲を青白い閃光が迸る。
「ごめんね?」
両手を後ろで組みながら肩を竦めて笑う。
「邪魔するならまとめてやっつけちゃうね!」