第五章



点々と浮かんでいる光の正体は分かった。光に呑まれた仲間たちのその後に関してもある程度想像が出来た。残る疑問は。

……この世界の現状。

一先ず四人は歩いてみることにした。現地住民であるルーティの野生の勘が働くまま歩いていけば次第に緑が増えてきて。自分がよく目にしてきた景色を取り戻したかのようでルーティは胸を撫で下ろす。

「、あ」

ルーティは思わず足を止めた。

「どうしたの?」
「聖樹フィエスタだよ」

視線の先を辿ってみれば確かに他の木より存在感を放つ腰回りの太い木が一本あった。聖樹と呼ばれたその木はメヌエルで生まれたポケモンたちに人間と同じ姿を与えてくれるのだとか。

「うーん」

ルーティは首を傾げる。

「……歳をとると縮むのかな」

何気ない発言にマスターとクレイジーは同時に互いの視線を交わす。

「読めてきたな」
「えっ?」
「この世界は時間を逆行している」

ルーティは困惑したように言葉を投げかける。

「キーラの仕業だよね。何のために?」
「あれが攻撃を仕掛ける寸前──救済の光だと話していたのは覚えているだろう。あれは俺とクレイジー以外との接触を酷く嫌悪していた。それどころか穢らわしいと吐き捨てる程に存在自体を蔑んでいた」

マスターは空高く浮遊する都市を見遣る。

「新たな神に成ることが目的だとしても世界がそれを認めないのなら作り替えるしかない──だがあれは創造の力も破壊の力も持ち得ない。そこで。光の化身たる力によって時間の流れを逆行させることで数千年前にまで遡り、自身が生まれ育った時間軸に繋ぎ止めることで世界に無理矢理自分が神だと認めさせた」

無茶苦茶な話をされているような気がするが、あくまでも推測である。

「あれが世界の半分を光で灼いた時代には俺もクレイジーもまだ目覚めていなかったからな。俺たちが亜空間に避難している隙にそうしたのであれば条件としては変わらない。世界もそう思い込まざるを得ないだろう」

……頭が混乱する。

「要するに白雪姫の継母ってことでしょ」

あっ。

「世界が鏡で姫があんた達。継母は鏡に世界で一番美しいと認めさせるために姫を城から追い出した。城の兵士を黙らせて城は自分が最も美しいと持て囃されていた頃の姿に。結果、鏡は世界で一番美しいのは継母だと告げた」
 
 
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