第四章



さて。改めてクレイジーは虚空を見遣るとその左目に赤い光を灯した。即座に赤黒い光の斬撃が空を幾度も切り刻むと空間を裂いて。その先は白く塗りたくられているのか光が占めているのか兎角白い世界で正しい様子が窺えない。

「行こう」

ルーティは意を決して足を踏み出した。


強い風が吹き抜けて。

やがて──白い世界に色が差す。


「、これは」

流石のマスターもそんな声を漏らした。

建物は見当たらず。あれどその殆どが廃墟の様に要所要所が崩れて閑散と。人影は一つとして窺えないものの七色の光が点々と浮かんでいることだけ確認できる。緑を剥ぎ取られた岩山や木々が遠く、空は不穏を物語る曇り空。

あの時。確かにレイアーゼの上空から亜空間に逃げ込んだはずだが今現在目の当たりにしている景色にその国の痕跡は一つも見当たらない。

「本当に同じ場所に出たの?」

カービィが眉を寄せる。

「……違う」

ルーティは呆然とした様子で呟く。

「ここは」

一目には異なれど忘れるはずもなかった。


故郷の──森林都市メヌエルを。


「……どうなってんの」

遥か空高く天空大都市の頂点に浮かんで見えるそれは黙りを決め込んでいる。

変わり果てた地上に点在する光の正体は。


神の座を賭けた戦いが今始まろうとしている。

この世界。……灯火の星で。
 
 
 
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