第一章
破壊衝動に疼く紅を携えた左目に白の手袋纏う左手。軋む音立てて更に力を込める少年は引き剥がすべく両手を掛けてもがき苦痛に歪ませる姿を前に口角を吊り上げて嗤う。
「ソニック……!」
ようやく意識の回復したパートナーが負傷した体を引きずって呟くが構うはずもなく。
「ほんと。僕たち両想いだよね。どこ行ってもこうして巡り会うんだもの」
からかうように。
「運命なんて言葉はまさしく僕たちの為にあるようなものだと思わない?」
視界が霞む。
「あは。聞いてる?」
力が入らない。
「──!」
ほんの僅かな不審な音さえ逃さず反射的に振り向いたが刹那解放する。既の所で確かに左手を狙っていた電撃を躱したがそれと異なる稲妻が二方向から不規則に折れ曲がりながら襲う。
す、と浮かべていた笑みを失せて左手を素早く払い一方はその際発生した赤と黒の閃光が弾く形で打ち消したが、もう一方はその場から飛び退く形で回避する他なかった。容赦なく地面の表面を削る攻撃に自分も随分恨まれたものだと他人事のように感心しながら更に後方へ跳ぶも次に土を踏んだ頃には視界を燃ゆる赤の景色が覆い尽くして程なく──爆発音。
「ソニック、スネーク!」
地面にずり落ちて首を手で触れながら咳き込むその人の元へ真っ先に駆け寄ったのはルーティだった。治癒魔法までは心得ていないため身を案じるだけで回復の助けはしてやれないがそれでも間に合ったみたいでよかった。無事を確認して小さく息を吐き出し煙幕を振り返る。
「あーあ」
声を掛け合いながらスネークの身を案じていたルフレとマークはすかさず振り向く。
「良いところだったのに」
薄い青の防壁が攻撃の全弾を無に帰したようでその彼は当然無傷の様子だった。
「全く。この世界の主たる我々に逆らうとは」
双子の兄たる少年は肩を並べて不敵に笑う。
「……設定の見直しが必要かな?」