第四章
感情の起伏が激しい──訳でもない。彼の言動から察するに同じ地位を持つ相手しか関わりを持つつもりはないらしい。邪魔立てをする様であれば容赦なく先程のように制裁を下す。
「話すことがあるとでも思ってんの?」
言葉を交わせるだけ救いだと思いたいところだったが生憎その対象となり得るのがこの双子。配慮できるはずもない。
「失敬。確かに相応しくない環境だ」
にこやかな発言に誰もが悪寒した。先程の一部始終がフラッシュバックする。
「クレイジー」
マスターが静止を促す。
「キーラ」
あくまでも冷静に慎重に言葉を選ぶ。
「お前に目的はあるのか」
キーラは胸にそっと手を添えながら応える。
「遠い昔の話──私はこの世界を手にするべく戦地に駆り出された」
長い睫毛の下から空色の眸を覗かせて。
「目的は果たせなかった」
口惜しい。キーラは小さく呟いた。
「この先も果たせないだろうな」
「意地の悪い事を」
「生憎、席が埋まっているのでな」
誰もが固唾を呑んでその様子を見守っていた。キーラはゆっくりと視線をあげる。
「成る程」
双眸は暗闇に浮かぶ獣の金の眸のように。
「交渉の余地は無い様だ」