第四章
キーラは変わらず笑みを讃えている。不気味なほどに感情が読み取れず思考も読めない。
「──おい!」
リドリーは声を荒げた。
「勝手に」
「隣におられるのが弟君か」
キーラはリドリーに構う様子なくクレイジーに視線を映して自身の胸に片方の手を添える。
「初めまして──」
「主人の命令に背くなッ!」
耳に響く怒号。
「聞いて」
次の瞬間だった。
「、ッか」
リドリーは血反吐をはいて目を開く。
「──煩わしい」
キーラの目の色が変わっている。
先程までの空を映した色と打って変わって血の色のような深紅。リドリーの態度が酷く気に触れたのだろうこれまで張り付けられたなのような笑みを浮かべていたばかりにその纏う空気の雲泥の差にルーティは口の中が乾いた。
「神々の談合に羽虫が関わりを持とうなど」
徐ろに振り向きながら。
「文字通り。──虫唾が走る」
冷めた口調で吐き捨てるキーラが視線を注いだ先でリドリーは細く鋭く形状を変化させた螺旋の羽に胸の中央を貫かれていた。高く高くその身を晒された後リドリーの体は雑に放られる。
「サムス!」
反射的に飛び出したサムスが止める声も聞かずリドリーの元へ駆け付けた。
「さて」
キーラは気にも留めずマスターとクレイジーに再び向き直る。
「何処まで話したかな」