第四章
まずい──誰もが直感でそう思った。
煩わしいほどの笑い声を上げるリドリーに反しキーラは笑みを讃えるばかりで。もしもあれがタブーのように純真無垢な幼子と同じ思考なのであれば覚醒の手助けをしたリドリーを主人と認め、願いを叶えるべく力を振るうだろう。
かといって古代兵器にただの人間である此方の攻撃が通用するのか否か──あれこれ思考を巡らせていたが刹那不安を消し飛ばすかのようにファルコは銃を構えると即座に発砲した。
「なっ」
弾は虚しく空を貫く。
「初めまして」
我が目を疑った。
「私は──光の化身キーラ」
マスターは目を見開いている。
「貴殿が創造神マスターハンドか」
何故なら。
「お会い出来て光栄だ」
音もなく気配もなく。
マスターの目の前に現れたのだから。
「──ッ!」
遅れてマスターが右腕を振り払いながら薄青の防壁を張るとキーラはそれが触れないように一メートル程後方へ移動していた。空間転移なのだろうが目で追う隙すら与えられない。
「ッこいつ」
クレイジーは睨み付ける。距離を詰められた件に関しては二の次だ。一番の問題は片時も目を離さず警戒していたにも関わらず──創造神と破壊神を相手に距離を一瞬にして詰めてきたということ。予備動作も何も読み取れなかった。
「ああ」
マスターは眉を寄せる。
「厄介だな」