第四章
ルーティは頷くとウルフェンから降りてワープパネルへ向かった。ふと辺りを見回せば剣戟や銃撃の音。彼らはもちろん本気で戦っているのだろうがこの戦場における空気は晴れ渡った空のようにからっとしていて──スマッシュブラザーズとして楽しんでいるようだった。
そんな彼らの心の内を思うと疼いて仕方ないが自分たちをこうして逃がすために幾つもの可能性を踏まえて計算して最も動きやすいこの状況まで導いたのだから決して無駄には出来ない。
「行こう」
ウルフが念のためウルフェンを自動操縦モードで退避させて合流したのを見てルーティは一歩足を踏み出す。ワープパネルはその瞬間淡い光の柱を伸ばしてルーティ達を包み込んだ。……
レイアーゼ中央司令塔。──最上階。
先程の一室よりも幾らか広く感じられるのは恐らく錯覚だろう。同じような造りに見えて壁は今度こそ分厚いコンクリートに囲われている。室内は床も壁も天井も真っ白で大理石によって作られており一目で普段は一般の人間なら誰も足を踏み入れることなど許されない特別な一室なのだろうと感じさせた。
そんな一室の端にワープパネルは設置されておりルーティとウルフはそこから部屋に足を踏み入れる事となる。軽く辺りを見回して──その奥。低い段差をあがった先に見落とせるはずもない存在感を誇る巨大な真珠色の球。今はまだ淡い光を宿すだけで攻撃性は見られないが何か糸に吊るされているでもなくそれは宙に浮かんでいる。球だけではなく、螺旋のように纏った内側が極彩色の羽根が美しく印象的で。
「……あれが」
ルーティは思わず声を洩らした。