第四章
数分後──ルーティは梯子の先の部屋に出る。想像していたより深さを感じたため疲れを感じたが彼らの協力を得ずにいればもっと酷い疲労を味わせられていたことだろう。試しに自分が出てきた所から地下水路を覗いてみたが暗いお陰かジョーカーとミカゲの姿は見当たらない。早々に退散したのかもしれないな。
「見張りは?」
先に登っていたマスターとクレイジーが話している横でルーティはタイルを穴に嵌め込む。
「居ないようだな」
「へぇ。なにやったんだか」
どうやら本当に警備員や研究員といった人間は一人も見当たらない様子。
「行くか」
スピカのことは待たないのかと聞きたいところだったがそんなのは愚問だろう。彼らは自分の目的の為に誰かを待つということを知らない。この少人数と神力も使えない戦力では無鉄砲で愚かだと笑われてしまいそうなものだが彼らは残念ながら酷く頭が回る。そもそもの話ただの人間が神様の心配をするのはどうなのか。節介どころの話ではないだろうな。……
「って」
ルーティは納得がいかなそうな面持ちで。
「僕が先頭なんだね」
管理室を出た途端にこれである。
「当然だろう?」
「というか神様に先頭を歩かせるの?」
警戒を怠らないことは素晴らしいけれども!
「自由の女神だって民衆を導くために自ら先頭に立ったのに」
それを言うとマスターは笑って。
「可笑しなことを。お前はポケモンだろう」
こんなトレーナーがあってたまるか!