第四章
とはいえ。相手が此方側の動きを把握している上で準備万端となると自然と身が引き締まる。もちろんそれ自体は悪いことではないのだが相手がおとなしく最上階で鎮座していてくれるのかといったらそこは保証できないだろうし。
「──この先だ」
そうこう考えている内にいよいよ司令塔内部は目前となる。ジョーカーの視線の先には鉄梯子──ここを登れば内部に出られるようだ。
「ミカゲ?」
一歩後ろに下がって見守る彼を見てルーティは怪訝そうに視線を返す。
「どうやら道案内はここまでのようだな」
マスターが代わりに疑問を解いた。
「──この梯子を登れば管理室の倉庫に出る。部屋を出たら突き当たりにあるエレベーターを使って最上階へ向かうといい」
ジョーカーが説明する。
「もちろん警報設備や見回りの心配はしなくていい。抜かりなく既に手は回してある」
それだけ聞くとマスターとクレイジーは納得がいったのか視線を交わして。
「及第点といったところだな」
「ご苦労さま」
まったく最後まで感謝の気持ちは何処に置いてきたのやら素直じゃないふたりだったが対するジョーカーとミカゲはそんな対応にはもう既に慣れてしまった様子で言い返す様子もなく。
「ありがとう」
マスターとクレイジーがさっさと梯子を登っていくその下でルーティは感謝の意を述べる。
「最後まで同行できず面目ない」
「ううん」
彼らの協力が無かったらこうも体力を温存して目的地に足を踏み入れることすら敵わなかったことだろう──何より得ておくべき情報は充分過ぎるほどに得られたのだから、後はここまで導いてくれた彼らのためにも結果を残すだけ。
「行ってきます」
そう言ってからルーティはいよいよ梯子に足を掛けて登り始める。その後ろ姿を見つめながらミカゲは静かに呟くのだ。
「また後で。……」