第四章



◆第四章『光の化身』



……時計の針の音が煩わしく。

深く息を吐けば傍らの少年が眉を寄せる。

「仕方ないじゃん。お前が選んだことだろ」

正論。男は目を細める。

「そうだな」


己が正義を問い糺した二ヶ月前。

絶望のその先にあった未来をようやく掴んだ。平和を噛み締めるようにゆっくりとこの世界を見渡しながら。選び取った選択は吉か凶か。


「失礼する」

扉を叩く音に肩を揺らした。顔を上げた先には一人の男が誰よりも真剣な面持ちで。

「上層部からの伝達だ」

少年は露骨に顔を顰める。

「上層部ぅ?」
「続けてくれ」

その男は頷いて伝達事項を伝える。

「……分かった」


靴音。水の滴る音が不気味に反響する。


場面は変わって地下水路。中央司令塔を目指し一列で歩みを進める五人の姿。

特に会話も生まれなかったのは無論先程の件が理由だろう──雑に扱っていたように見えて誰よりも彼を愛していた。積み重ねてきた成果が全て消し飛ぶかもしれない手段を選んだのは、双子にとって苦渋の決断だったはずだ。

「……了解」

ジョーカーが小声で誰かと無線でやり取りしている様子だったが聞き取れず。

「わっ」

不意に足元を鼠が走っていくのだから反射的に飛び退いた。気付いたミカゲが振り返る。

「大丈夫で御座るか?」

うん、と答えたつもりが此方に気付いて視線を送る双子に尻窄みになる。本来息を吸うように敵対してる相手なのだからどれだけ怒っていて理不尽だろうが気にも留めないはずなのだが、今現在は仲間という括りである所以かどうにも調子が上がらない。ルーティは溜め息。

……スピカ。早く帰ってこないかなあ……
 
 
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