第三章
はてさて。大きな舌打ちを残して紫色の空間へ足を進めるスピカを見送ったところで。
「む」
シモンは建物の隙間から表通りを見遣る。
「人が増えてきているな」
「気付かれる前に」
リヒターが促した先にはマンホール。
地下水路と言ったか──鼻につく匂いに躊躇が生まれるも迷いなく飛び込むジョーカーを見てルーティは感心して目を丸くした。
「本当」
クレイジーがぽつりと呟く。
「やってくれるよね」
リドリーの狙いが双子に屈辱を与える事ならばこの横顔から察するに充分すぎるくらい目的は達成されたことだろう。
「ああ」
マスターは暗く沈んだ青の眸で。
「どうしてやろうか」
刺すような殺気に誰もが思わず口を噤んだのは言うまでもない。マスターとクレイジーに続きミカゲがマンホールの中に入ると最後シモンはルーティの肩をぽんと叩いて。
「健闘を祈る」
目指すは。
「……うん!」
中央司令塔最上階──