第三章



……ルーティは黙っていた。

「そういうこと」

クレイジーは気怠そうに息を吐き出す。

彼らにしてみれば──タブーは十数年の年月をかけて生み出した最高傑作。その目的や動機は許されたものではないだろうが今の形になる迄どんな手間暇があったのかと思うと今回の強制シャットダウンをきっかけに記憶データが飛んだらそれこそ泣きっ面に蜂というものだろうな。

「スピカ」

クレイジーは未だ硬直状態のスピカを横目に。

「やり方は分かるだろ」
「……は」

スピカは不満げに眉を寄せて。

「なんで俺が」
「──誰かさんが優秀な部下を酷使してくれたおかげで頼る相手も限られてるんだよね」

ぐっ、と言葉を詰まらせる。

「よろしく」

半ば押し付けられるような形で(半ばも何も完全に押し付けられているが)スピカは一度離脱してタブーを亜空間に連れ帰る事となった。

これだけのためにダークシャドウを呼ぶ訳にもいかない。それはスピカも分かっているようでルーティの元へ渋々と歩み寄るとタブーを抱きかかえてクレイジーを睨みつける。

「、おい」

クレイジーは核をタブーの腹の上に置いて。

「間違えて嵌めないでね」
「落とすなよ」

二重苦。なるほど出来た上司である。

「分からないとか理由にならないからね」
「欲を言えば五分だ」

……本当にとんでもないブラックだな。
 
 
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