第三章
死角ではない。真正面から。空中に飛び上がり身動きの取れないタブーの前方に参じて蹴りを繰り出すルーティ──しかしそれも呆気なく、構えた腕に易々防がれる事となる。
「じゃま」
呟いたが小さく目を開いた。ルーティの頬から始まり体全体に青白い閃光が跳ねまわる──
「ごめんね」
ピカチュウの基本的な特性──静電気。静かな電気と記すが実際彼らの溜め込んだ電気というものは当然一般人の比じゃない。
バチバチッ──大きな音を立てて行き場のない電気が眩く激しく飛び交う。一気に電気を流し込まれる形となったタブーは力無く地面に落下した。砂埃の舞う中ゆっくりと何とか体を起こしてみても残留する電気が体の自由を奪い思うように動けない様子で。それでもどうにか立ち上がるのだから新世界創造計画用人型禁忌兵器とは名ばかりではないなと感心を覚える。
「お前たちにしてはやるじゃん」
クレイジーは左腕に黒や赤の閃光を跳ねて。
「──上出来」
お褒めに預かり光栄です。
なんて洒落た台詞を言う間もなく。
「……!」
目にも留まらぬ速さで。
「、は」
タブーに接近した彼の左腕は。
「え……?」
寸分の狂いもなく。
タブーの胸の中心を貫いていて──