第一章



その時だった。

「うわああああ!?」

急旋回──思わずしがみつく。

何事かと振り返ってみれば確かにこちらを追尾する機影を一機捉えた。だがしかし次いで紫の光を帯びた黒の矢の群れを放ってきたのは当然その正体不明である謎の機体ではない。

「ルフレ!」
「ええ!」

双子軍師が魔導書を片手に息を揃えて腕を突き出すとウルフェンの丁度背後に巨大な魔方陣が展開した。魔方陣は無数の攻撃を余すことなく弾くと役割を果たしたかのように消え失せる。

「ルーティ!」

──何を言うより早く放たれたのは最大出力の稲妻である。鳴き声を上げてジグザグに進むそれは追尾する機体の左翼を直撃した。爆発音が響いて左翼を半壊させたその機体は黒煙を上げながらバランスを崩して進路を逸れていく。

「よし」

思わず声に出したのも束の間。

「やれやれ」

この声は。

「創造神の特性を知っての所業か?」

澄んだ青を携えた右目に白の手袋纏う右手。薄笑み浮かべて先ほどの機体の右翼にいつの間にやら足を組んで悠々と髪を風に靡かせる。

まさか今更見間違うはずもない。

「お前は!」

マークはくっと眉を顰めた。

「マスターハンド!」
 
 
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