第三章
リドリーといえば──半年前の新世界創造計画にて双子の率いる亜空軍の一員としてX部隊基全世界を苦しめた男である。サムスの宿敵でもあり事件後は行方知れずだったが……
「マスターとクレイジーは何か知ってるの?」
「亜空軍を追放した後はさっぱりだな」
……ん?
「、追放したの?」
「しょうがないじゃん」
クレイジーは気怠そうに。
「凶暴だし短気だし横暴だし」
自己紹介かな?
「おい」
「ナレーションに突っ込むのはなしで」
慌てふためくルーティにクレイジーは溜め息。
「とにかく。方針が合わなかったんだよ」
正当な理由ではあるが、そこまで言うのだから余程扱いづらかったのだろう。しかし聞く限り彼はプライドが相当高いようだしマスターとクレイジーが何を言って追放したのか知らないが逆恨みの可能性も充分に有り得る。
「古代兵器の扱いに関して」
ミカゲは話を続ける。
「古い本に綴られるほどの存在だ。覚醒すればどんな恐ろしい事態を招くか分からない。だがリドリーが提案したのは古代兵器を覚醒させて全世界を支配しようというものだった」
古代兵器の覚醒には神力が必要となる。神力を持ち得るのはマスターとクレイジーとタブーの他に有り得ない。そんな恐ろしい存在が政府の手に渡ったことを知ったふたりは彼らが行動を起こすより先に交渉を持ちかけた。国の安全を永久保障する代わりに古代兵器を譲渡せよ──しかしそうして交渉に乗り出すことを見越していたリドリーはふたりの胸の内など知るよしもなく悪魔の囁きで容易く裏切らせる。
それが。一連の流れ。
「拙者たちは"古代兵器に関して双子と交渉をする"という話までしか聞いていなかった」
「嘘をつかれていたの?」
ルーティの質問にミカゲの表情に影が差す。
「……情けない話で御座るよ」