第三章
ここで彼らの好意に逆らい突っぱねたところで何の利点もない。先程の戦闘ではものの見事に足を引っ張ってしまいマスターとクレイジーは激しく魔力を消費しただろうし。先程の戦闘にもし、タブーも加わっていたらこうして窮地を脱することすら叶わなかっただろう。
「ブルー」
ジョーカーは耳たぶに装着した小型の無線機に向かって喋りかける。
「最短のルートを割り出してくれ」
「──任せてください!」
元気のよい声が返ってくる。
「いいの?」
「無論」
ミカゲは頷いて。
「ここから先は安全に確実にお主たちを司令塔最上階まで送り届けるで御座るよ」
何と頼もしいことだろう。先程まで息つく間もなかったが、急にこうもとんとん拍子に上手くいってしまっていいのだろうか。
「ただし」
安堵したのも束の間ミカゲは条件を提示する。
「──ダークシャドウ。お主らは引き返すことをお勧めする」
……!
「、勝手に」
噛み付かんばかりの勢いのダークウルフの前に腕を差し出して制したのはスピカだった。
「そういうことだ」
「でも!」
「さっきから無理してるだろ!」
スピカが遮るように声を上げると流石のダークウルフも口を噤んで。
「とっくに活動可能限界を超えている」
マスターとクレイジーも黙っている。
「これ以上は……無理なんだよ」