第三章
次の瞬間だった。
「──!」
巨大な爆発が起こり黒煙が周囲に立ち込める。まともに目も開けられない劣悪な環境の中咳き込む声を頼りにスピカの姿だけは捉えて。
「こっちだ!」
聞き覚えのない声に釣られるように顔を向けるもこの良好とも言えない視界の中では何が何処にいるのかさえ判断が付かない。そうこうしている間にルーティは何者かに掬い上げられるような形でこの戦場を離脱する形となる。
──程なくして黒煙が晴れたがそこにいるのはデュオンだけだった。警戒するように辺りを見回していたが標的とする対象が範囲内を脱したものと判断すると構えていた腕を下ろして。
虚しく。
機械音だけが残留する。……
「やれやれ」
金髪の男は帽子を被り直す。
「間に合ってよかったぜ」
──窮地を救ったのはなんとフォーエス部隊の一員であるテリーだった。先程ルーティを抱きかかえてあの場を脱したのはジョーカー。ルーティが呆気に取られているのも構わずそっと地面に下ろし手袋の裾をきゅっと引いてみせる。
「えっと」
辺りを見回せばそこは先程の草原からは離れた小さな森の中だった。最短ルートで移動したのだろう。それはともかくとして司令塔の監視下である正義部隊がこんな真似をしていいのか。
「まったく呆れたものだわッ!」
びりびり。
「無鉄砲が過ぎるのよ!」
「き、気持ちは分からないでもないが」
その少女の傍らで忍び装束の男は呆れ顔。
「もう少し声のトーンを落としてもらえると有り難いで御座る……」