第三章



「──!」

ガンサイドの構えた砲口から無数の光弾が放たれた。撃ち出された光弾はみるみる内に膨張すると馴染みのある形状に変化を遂げて。纏う光はやがて弾けて姿を露わにする。流石のスピカも目を開いた。

「な」

発言するより早く此方に狙いを定めて突撃した剣は防壁を前に粒子となって消滅する。けれどそのひとつに限らず撃ち出された数だけ光弾は形を変えて。

「リーダー!」

防壁が持たないと悟ったダークウルフはスピカの体を捕まえて降下する。同様にダークファルコがルーティの体を引き寄せて抱きかかえながら降下すると同時に防壁は防御を破られた。着地は叶えたが四人の体勢が整うよりも早く光弾は放物線を描きながら進行方向を変えて降り注ぐ。ルーティは顔を顰めた。

「……!」

既の所で攻撃を防いだのはクレイジーである。防いだというよりはそれ以上の火力を誇る攻撃で打ち消したと言った方が正しいか。光弾が尽きたと見るや否や、反撃とばかりにクレイジーの足下に幾つもの魔方陣が浮かび上がりその内のひとつから紫色の光を灯す柱が先端を覗かせるとすかさず引き摺り出した。

「クレイジー!」

此方の声など気にも留めず地面を蹴り出して。狙うはデュオン。デュオン自身も気付かないはずはなく目を光らせると回転して砂埃を巻き上げた。砂埃の中に突っ込んでいく形となったクレイジーだったが死角から繰り出される攻撃を素早く紫色の柱、即ちエネルギーピラーを振るって弾き返す。撃ち出される光弾は兄のマスターが遠隔補助で防壁を展開させて妨害。しかし距離を詰めて力強く薙ぎ払ったエネルギーピラーがとらえたのはガンサイド、ではなくソードサイドの剣。一度引いたエネルギーピラーをもう一度振るい、叩き付ける。けれどソードサイドの剣が青白い光を纏うとエネルギーピラーは打ち勝てずに砕け散った。小さく舌打ちをして地面に足が付くと同時に飛び退けば剣を交差させた後の薙ぎ払いを回避して。

「厄介なものを仕掛けてきたね」
「全くだ」

デュオンの攻撃圏内から脱したクレイジーは再びルーティ達の前に立っていた。その傍らにはマスターも。

「俺らにも分かるように説明しろ」

スピカが眉を寄せる。

「あれには神力が積んである」
「な……」
「よく考えて行動するんだな」

マスターは振り向くと冷めた声で告げる。

「でなければ──死ぬぞ」
 
 
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