第三章



周辺の精鋭部隊やヘリコプターを退避させるわけだ。回避したルーティ達が見上げていたのは陰陽太極図柄の車輪を持つ下半身を持ち、そこから二つ騎士の甲冑を思わせるロボットの上半身が生えたような姿をして上半身は前面部の刀剣を装備した青い体と、背面部の砲塔を装備したピンク色の体で構成された亜空軍兵器──デュオンである。

ガレオムに続きデュオンの投入とは──確かに主犯とやらはスピカの推測通りマスターとクレイジーに徹底して屈辱を味わわせてやりたいらしい。恐らくこれも本物とは異なる複製なのだろう。

「兄さん」
「ああ」

マスターは目を細める。

「何としてでも俺たちの進行を阻止したいらしいな」

そうこう話している間に次の攻撃が放たれた。体力を温存しておきたいところだが敵もそう簡単に見逃してくれるつもりは無いのだろう。青い体の騎士ロボット──ソードサイドが勢いよく頭を振り下ろすと同時に剣が地面に叩きつけられ、一帯は再び高く舞い上がる砂塵に包まれた。砂塵を突き抜けて上空に姿を現したのはルーティとスピカとダークウルフである。

ピンク色の体の騎士ロボット──ガンサイドは即座に振り返ると両腕の砲口を惜しみなく構えた。放たれる光弾にダークウルフは腰に備え付けた小型装置に触れリフレクターを展開させて対抗。全弾反射を叶えたが当然のことそれだけに留まらずガンサイドはしつこくミサイルを放つ。だがしかしこれも遅れて空に参じたダークファルコが蹴り出したリフレクターが反射。

攻撃後に生じる隙を狙い打つかの如く頬にそれぞれ青と黒の閃光を跳ねさせて。ルーティは両手を突き出しスピカは勢いよく腕を振るうと同時に指を鳴らして。──放つ。眩いばかりの電気の束を。

命中して爆発を起こしデュオンの纏う黒煙を見下ろしながら思えば苦戦を強いられるはずもないのだと──ルーティは当時亜空軍と敵対していたのだからそこで応戦していなかったとしても情報を得ていないはずもなく。スピカはそもそも亜空軍に所属しており攻撃のパターンを把握していないはずもない。詰まる所もう既に攻略済みなのである。

そうなれば今度こそマスターとクレイジーが出る幕はないだろう。例え自分たちの体力が尽きようと彼らにだけは辿り着いてもらわなければいけないのだから、


「え」


薄青の防壁が目前に展開されたのは直後のこと。警戒するまでもない攻撃をどうして防ぐ必要があるのか。その意味は直ぐに理解した。
 
 
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