第三章



場面は草原を横断するルーティ一行に切り替わる。目指す先にはレイアーゼの街並みが窺えるが、有るべき道を外れて進んでいるのだから体感としては普段より遠く感じる。はてさて話を引き戻すと国のお偉方に悪知恵を吹き込んだ輩がいるとのことなのだが──徹底して屈辱を与えて殺したいほどあの二人を憎んでる、なんてそもそも亜空軍という立場で数え切れないほど犠牲を出してきたのだから当てはまる人間なんて幾らでもいるんじゃないだろうか……?

「、止まれ」

考えている間に少し先を歩いていたはずのマスターとクレイジーは足を止めていたようで指示に気付いて顔を上げた時には遅くルーティは軽くクレイジーの背にぶつかる形となった。

「危ないな」
「ご、ごめん」

ルーティは苦笑いを浮かべて向き直る。

「……どうしたの?」
「妙だ」

マスターはただ一言応えた。

「……そう?」
「お前それでよくリーダーが務まるよな」

問題に対し不正解だと罵倒されるシステムなのか。

「あれだけ付き纏っていたヘリが見当たらないだろ」

そういえば。ルーティは釣られて空を見上げてみたが確かに煩わしいプロペラの音を響かせながらしつこく飛び回っていたヘリコプターが見当たらない。諦めてくれたものかと一瞬気を緩めたが打って変わって臨戦態勢を取るマスターとクレイジーを目に自然と緊張の糸が張り詰める。森を抜けた所為もあってか生き物の鳴き声も自然の生み出す音も無く──いや寧ろそれが幸運だった。神経を研ぎ澄ますまでもなく敵の最初の攻撃の方角を察知することが出来たのだから。


「……!」


振り向きざまに展開された薄青の防壁が光弾の群れを余すことなく防いだ。発動したのはマスターである。続けて飛んできた三日月型の青白い斬撃を、すかさず飛び出したクレイジーが脚に魔力を集中させて空中で前転すると同時に踵落としを繰り出し打ち落とす。

「、上だ!」

続けて声を上げたのはスピカだった。落ちる影に顔を上げたが刹那重量感のある物体が地面を抉る勢いで。──舞い上がった砂塵の中で金色の目が瞬いた。その目が全部で四つ。腕を振るい砂塵を払う。
 
 
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