第三章
レイアーゼ中央司令塔。──内部。
数ある部屋と構造が異なり大きな円を描くように設けられたこの場所は殺風景ではあるがあるべき壁の全てが厚いガラス張りとなっていて、天空大都市たるレイアーゼの街並みを広く展望できる。多くの住民や観光客を招くための一室かと思えばそうではないらしく。であれば──司令官含む上層部が良くも悪くも見下ろすために設けられたのであろう。はてさて誰かさんの顰めっ面が思い浮かぶようだが追い打ちをかけるように乾いた音が響いたのは直ぐのことである。
その男は衝撃で床に投げ出されたまだ小さな体を見窄らしいものを見るかのような冷たい目で見下して舌を打つ。苛立った様子で眉間に皺を寄せながら倒れた少年のすぐ側で待機していた二人組の男の内一人に歩み寄り胸ぐらを掴むと。
「俺はよお。"双子の亡骸を持ってこい"って言ったはずだがなあ?」
ひ、と男の顔が引き攣るのも構わず腕力で持ち上げて吊るしながら怒号を浴びせる。
「──手ぶらで帰ってくるたあどういうことだ!? おまけに差し向けたゴミクズは戻って来やしねえ! 失態だ! ああ!? 分かってんのか!」
弁解を聞く耳も持たず持ち上げた男の体を今度は床に叩きつけるようにして放る。不機嫌を全身で表した男に睨みつけられると残った男は震え上がった。
「居場所は掴めてるんだろうな」
「──ちゅうおうしれいとうをきてんにきょりやくさんぜんメートル」
少年はぽつりと呟いて立ち上がる。
「ひょうてきはげんざいびゃくやのもりをつうかしてちゅうおうしれいとうのほうがくへしんこうちゅう。──ひょうてきにたいのしゅうへんには」
「デュオンを投入しろ」
残された男は次の発言に驚いた。
「し、しかし」
「この俺に楯突くってのか?」
男はぎろりと睨み付けると目と鼻の先にまで迫る。
「……リドリー様に」