第三章
構わず突き進む双子を追って次の茂みを抜けるとようやく森を抜け出たようで歓迎するかのように太陽の光が射し込んだ。思わず目が眩んでしまうルーティだったがそうして反射で足を止めたのはどうやら自分だけではなかった様子で。
「……く」
ダークウルフは眉を顰めている。
「大丈夫?」
「……問題ない」
とてもそうは見えなかったのだが此方の心配を余所にダークウルフは自分の影に向かって手を翳すと影の中から引き出した黒い布をフードのように被った。日光を遮るにも万全とは言えないがそれでも何もしないよりは遥かにマシだろう。
「……本当に正面から突撃するの?」
「そうだな」
ルーティは思わぬ逆鱗に触れてしまわないようにこっそりとスピカに耳打ちする。
「若い内に芽を摘み取るのと同じだよ。こっちの体力が残ってる内にけりをつけたほうがいい」
スピカは短く息をつく。
「とにかく──気掛かりなのは国の連中どもに悪知恵を吹き込んだ奴の存在だ。古代兵器が主犯って線も考えたがそれなら今の今までだんまり決め込んでたってのもまた妙な話だろ?」
ルーティは首を捻る。
「今回のタイミングでたまたま覚醒したとか」
「古代兵器の覚醒には神力が必要不可欠だ。もし眠っている間にもそれを生き物や自然から得ていたとしたらもっと早い段階で目覚めていたはず。それに──国の連中が古代兵器の存在を先に突き止めていたとしてわざわざ双子から神力を奪おうなんざ考えつくと思うか?」
スピカはそこまで言って腕を組む。
「自殺行為だろ。反撃を受けるのがオチだ。逃げ切れたとしても目を付けられて行動範囲が狭まる──リスクが高すぎる。じゃあそいつがどうしてそうまでしてその作戦に拘ったのか」
目を細めながら。
「簡単な話だ」
ひと呼吸置いて紡ぐ。
「そいつは。徹底して屈辱を与えて殺したいほど双子を憎んでるってことだよ。……」