第三章
兎角。神力が使えずとも魔力は使えると。
「そういうことだ」
見るも無残な姿となって火を焚くかつての同胞など目もくれずマスターは歩き出す。
「狼煙を上げたようなものだ。今に連中どもが駆けつける。移動するぞ」
そうして彼らは今度こそ堂々と先頭を突き進む権利を得たわけだが不安は拭い去れない。万が一のこともあるのだし、とも思ったがこれ以上議論したとして譲るような相手でもないことは嫌という程思い知らされた。であれば自分に出来ることは彼らが行動を起こしやすいようにサポートをすることだけ──今度の件でスピカやダークシャドウの気持ちが分かった気がする。
立場を振りかざして舵をとるのではない。
彼らは確かに──強いのだ。
「俺たちが最も避けなければならないのは無論タブーとの戦闘だ」
上空をヘリコプターのプロペラの音が通過するのを聞き届けながらマスターは語り出す。
「通常、俺もクレイジーもタブーに指示を下す際神力の消費を極力抑える。何故か? 簡単な話だ。タブーは神力を蓄えることができない。俺たちが週に一度メンテナンスを行うのはその補充や調整も兼ねているからだ」
ルーティは頷く。
「だがあいつも今や連中どもの手に落ちた──欲深い人間ほど手段を選ばない。奴らは確実に神力の消費を顧みずタブーを酷使する」
タブーを思うと痛ましい現状だが鉢合わせた際違和感を感じた──操られているというよりは完全に記憶を書き換えられたかのように此方を敵としか認識していなかったのだ。逆らう意思さえ無きものとされているのであればタブーは言及された通り神力を使い果たすまでその身を酷使されることだろう。