最終章



はたと。声を失うのを見て。

「クリスタル?」

フォックスは怪訝そうに顔を向ける。

「……これ」

ぽつりと言ってクリスタルが指差したのは。


ルーティ・フォン。


え。そんな声が小さく漏れて。

簡単には信じられるはずもなかった。最後に見た記憶の中にあるその人とは姿形がまるでかけ離れているし、単純に同姓同名なだけである可能性もある。

スリッピーが無言のままマウスカーソルを名前に合わせてクリックすると大まかなプロフィールが表示された。森林都市メヌエル出身、レイアーゼ防衛機関公式主催シングルバトルトーナメント優勝。その時の戦闘能力を分析したレーダーチャート曰く、スピードがずば抜けて高いのが特徴。時点でパワーといったところか。……

「なんで」

フォックスは呟いた。

だってあの時、確かにユウが催眠術をかけたはずだ。彼が父親の死を追って戦場に赴き、同じ悲劇を繰り返さないために。


そのために。自分たちDX部隊に関する情報を全て忘れさせて。

ラディスに関する記憶まで改変したというのに――
 
 
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