最終章
腰まで流れていた桃色の髪はミディアムに。けれどウェーブがかかった髪の質は、相変わらず。背は当然あの頃と比べればすらりと伸び良い成長を遂げていて。
そう。彼女はリム・ライトネル。
滑舌があやふやで意地っ張りだったあの幼女である。
「っと」
木の根に躓きそうになるが、問題なく。森の中をさっさと駆けていく。
庭のようなものだ。それに今日ばかりは待たせてる人もいる。急げ急げと早くも軽く息を弾ませながら目指すはあの、向日葵畑。
「はあっ」
湾曲する木のアーチを過ぎればそこに。
さあっと風が吹き抜けた。一面の黄色い花々に言葉を失って見惚れる。
この場所は、一年を通してずっと向日葵が咲いている。沢山の向日葵が咲いては枯れ種が落ち芽吹いて、繰り返し途絶えることなく。それはまるでその場所にぽつりと置かれた墓石の下に眠るその人の未だ尽きることのない想いのように。
リムがゆっくり進み出ると草地を踏む音に先客の男が振り向いた。
「早かったのね」
一度、思わず足を止めたが根本的なところは変わっていない。
「お前が遅かっただけだ」
人より生意気で何処か冷めている。
昔に比べて伸びた襟足を三つ編みにして括った超能力者。
ユウ・ブラン。
「同じ学校なんだから待っててくれてもよかったじゃない」
「要領の悪いお前に合わせていたら日が暮れる」
「……貴方、本当そういう生意気なところ変わってないわね」
「変わらないのはお互い様だ」