最終章
声も。匂いも何もかも。
誰のものでもなくなった。
フォックス。
それなのにあの声は。あの温もりは。
「……ぁ」
まだこんなにも真新しくて――
押し殺していた感情が噴水のように溢れて止まない。
泣き叫ぶその人の声は。暗く濁った灰色の空の中に沈んで消えた。……
「カービィ」
向日葵畑を離れて森の中を歩いていたところ。不意に呼び止められた。
「いつ、ここを発つんだ?」
部隊は解散した。あの屋敷はもう僕たちの帰る場所じゃない。
「……前から興味はあったからさ。適当に観光して、出るつもり」
振り返らないままにカービィが答えるとロイは拳を握って、
「また会えるよな!」
雨の音が遠く。
「さぁね」
カービィは歩き出した。
再び呼び止めるべく体が動いたロイだったがマルスが肩を掴み、阻んで。それを振りほどくまでには至らず思いとどまって背中を見つめるロイとその隣のマルスの視線を受けながらカービィは、片手を軽く挙げてひらひらと振りながら。
「じゃあね。バイバイ」