最終章
依然として降り頻る、雨は止む気配はなく。
葬儀の場を離れてラディスの家をぼうっと見つめるのはカービィだった。がさ、と茂みを分ける音に気付いたが振り向かず、立ち尽くす。その人はゆっくりと距離を縮めて隣に並んだ。
「……あいつ」
赤毛を冷たく濡らしてロイはぽつりと呟く。
「最後までお人好しだったな」
誰かのために。それが馬鹿でも全力で尽くす。
けれどカービィの胸の中では濁った感情が渦を巻いていた。……世界は確かに救えた。でもあの場で正しく彼らを殺せていればもっと違う結末を迎えていたかもしれない。例え世界を救えても、これから先ずっと平和だったとしても。
……納得できないよ。あんたがいない、世界なんて。
「これからどうなるんだろうな」
「どうもしないよ」
カービィは静かに答えた。
「何も変わらない。これまでの日常に戻るだけ」
ただ。……ただ。
「……そっか」
ロイは執拗に話の展開を望まなかった。だってこれ以上は。
隣に並んだその人の目から、涙がこぼれ落ちてしまいそうだったから――