最終章
そうしてまた沈黙が訪れた。
語る話題が有るはずもなくただ黙々と。刻々と。降り頻る雨の音が、遠く。本当に遠く聞こえる。普段人より短気であるファルコも痺れを切らして席を立つといった荒い行動を起こすことなくじっと椅子に座っていた。
慣れない服に慣れない場面。彼にはどれだけ苦痛だっただろう。
「……?」
物音。それも玄関から。
フォックスは大きな狐の耳をぴくっと跳ねて傾け、振り向いた。程なく。雨の雫を滴らせながらとぼとぼと歩いてきて立ち止まったのはよく見知った一人の少年。
「ユウ……?」
見かけないとは思っていたが。どうしてこの、タイミングで。
「フォックスさん」
呼ばれて、向き直る。
「考えたんです。どうするのが私たち家族にとって最善か」
何だろう。
「息子のルーティを守りたい。それがあの人の願いだというのなら」
心の奥底でざわつく。
「……私も同じ」