最終章
あれ、と思った。
以前来た時よりもこの家が広く感じたのだ。確かに、あの時は他のメンバーも含めて此処を訪れていた。それが今日は二人だけで訪れているのだからそう感じるのも無理もない話かもしれない。……
これからこの家を母と子二人だけで過ごしていく。
そう考えると。なんて広い家なんだろう――
「あの人は」
ぽつりと。
「何か言っていましたか」
俯きがちに口を開いたその人は見るからに窶れていた。
それもそうだろう。生涯を誓った愛する人を失うということは。
こんなにも。残酷なことなのだから。
「……最期まで貴方たち家族のことを気にかけていました」
ルーティを――
最愛の友を前にして悲しい顔なんて出来るはずもない。大丈夫、任せろと繰り返して涙を呑んだ。腕の中でゆっくりと体温を失って、声もなく音もない友の亡骸を。遠く仲間が呼びかけようがいつまでも。いつまでも。
「……そうですか」