最終章
……俺が。戦場で生きていく理由は、もう。
森が切り開かれた広々とした草地に茶色の屋根が印象的な一軒家がぽつんと。
まさかこんな形で此処にまた訪れることになるとは思わなかった。たったの数ヶ月前まであの家の家主と次はいつ行こうか、なんて。
……あの時笑った彼の声は、どんな声だっただろう。
「フォックス」
感傷に浸ってる場合ではない。先を歩くファルコがついて来ていないことに気付き立ち止まり、振り返って呼ぶのをフォックスは、ああ、と小さく返して。
小走りで駆けつけ、石畳みを辿り扉の前へ。傘も差さずに向日葵畑から歩いてきた二人はすっかり雨に濡れており、出てきた人が濡れた髪や顔を見てお化けが出たんじゃないかと勘違いするのではとも思ったが。
手の甲で打つ音に駆けつけて扉を開いたその人は。
「……あ」
泣き腫らした顔で小さく目を丸くするばかりで。
「すみません」
ルピリアの反応を見て悟った。
幼い頃。父を亡くしたばかりの自分がとった行動と同じ。
「……ラディスじゃなくて」