第十一章-後編-
感受性が強く、与えるのも与えられるのも慈愛に恵まれた人。
御人好しだけど……それが時には危なっかしくて目が離せない人だけど。
ただ。何となく憧れだった。
自身の意志は意地でも曲げない素直な人で。……だから。
だから俺は。
「……ラディス」
フォックスは首に掛けていたペンダントをぎゅっと握って。
「……行ってこい!」
次の瞬間、フォックスはラディスの両肩を掴んでいた。
「俺たちには分からなかった。俺たちには……出来なかった」
ラディスは目を丸くしている。
「でも、お前なら……お前ならきっと届く!」
けれど脳裏を掠めるのは声を上げて拒絶する双子の姿。
「……よく聞いてほしい」
眉を寄せて視線を落とすラディスにフォックスは言った。
「お前だけなんだよ。何度ぶつかっても、生きて帰ってきているのは」
目を開いた。
「本当なら殺せたはずだ。でもそうしなかったのは……意味があるんだと思う」
ひと呼吸置いてフォックスは繰り返した。
「行ってこい」
真剣な眼差しで見据えて紡ぐ。
「……お前を待ってる」