第十一章-後編-
その人は蔑むような冷たい目を向けて言った。
「どうだ。満足したかよ」
突き刺さったはずの言葉がするりと抜けて消えた。
「救護班を回す。お前は下がってろ」
くるりと背を向けるのに合わせてラディスは勢いよく上体を起こした。
「っ、か」
「ラディス!」
全身に鋭い痛みが走る。
「……お前があの中にいる間、俺たちは何をしていたと思う?」
ラディスは重く視線を上げる。
「何もしなかった。出来なかったんだよ」
クレシスは横目を遣って、
「お前はどうだ」
刺さる。
「何も出来なかったんだろう」
奥歯を噛み締める。
「今この状況こそが全て、お前の成果だ。何も変わっちゃいない」
クレシスは顔を顰めた。
「だったら――」
「っ、待ってくれ!」
ずるりと体を引きずってラディスは訴える。
「もう一度……もう一度、俺が中に入って説得する、だから」
「ピーチ。鏡は持っているか」
ラディスが目を丸くするのにも構わずクレシスは顎でしゃくる。
「見せてやりな」