第十一章-後編-
「世界が? 僕たちが?」
ぎくりとして言葉に詰まる。
「……僕たち、とうの昔に壊れてるよ」
クレイジーは伏し目がちに呟く。
「実の親のように慕っていた人も友達も。挙げ句の果てには兄弟まで殺されて」
脳裏にぱっぱと浮かぶのは残酷な最期を映し出した一枚絵の数々。
「……そんなの、僕じゃなくたって」
ゆらり、虚ろ目を上げて。
「正気でいろって方がおかしいんじゃないの」
――絶望にくすんだ瞳だった。
彼が……そんな目をするとは思わなかったのだ。全く想像もしていなかった自分は思っていた以上に彼らのことを知らなかったし曲がりなりにもこうしたきっかけがなければ知ろうともしなかったのだろうと今更ながら気付かされた。
……ああ。
マスターの言った“勝手”とはそういう意味だったんだな。
「ようやく出会えたんだ。一つになれるんだ」
ふつふつと感情が湧き上がっていく。
「それなのに」
空気が震えている。
「……また、引き離すの?」