第十一章-後編-
眉を顰める。
「騙されているんだって。信じるなって」
マスターはじっと目を見張った。
「君が神様だってことは、充分に分かったさ。だからあの時見せた記憶だって俺を牽制する為の紛い物、ってことも有り得ない話じゃないだろう……」
吸い込んだ空気が喉奥を掠めて咳き込む。
「……でも。だったら、どうして」
ラディスは苦痛に歪んだ顔を上げて言った。
「分からないことでいいはずなのに――分かりたいんだ?」
どくん。
「君は賢い。全ては『設定』で狂いはなかった。……はずだった」
心臓が激しく胸を打つ。
「でも、何処かで縺れがあったとしたら」
鼓動が加速する。
「縺れを正した時。君が描いた未来と別の未来を選べるとしたら」
ざわつく。
「その別の未来も幸せだったとしたら――」
違う。
「マスター」
「違うッ!」
ラディスは思わず口を噤んだ。
「別の未来なんてない。俺たちの望んだ未来こそが俺たちの全てだ!」
……鼓動。
「勝手な想像で! 勝手な言い草で!」
叫ぶ。
「俺たちの世界に踏み入れようとするな……ッ!」