第十一章-後編-



……声。遠く、本当に遠く聞こえて。


「兄さんは僕のこと、好き?」

記憶。

「もちろん愛しているよ」

あの頃は優しかった。

「くすぐったい」
「お前は?」

暖かかった。

「……僕も愛してるよ」


毎日が愛おしかった。


だから。

お前を失うことになるとは思わなかったんだ。


雨の日も、風の日も。

何処にも見つからない弟の姿を探した。


この虚無感は。他の誰も満たすことは出来ない。

……そう思っていたのに。
 
 
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