第十一章-後編-
……なんてことだ。
ぼんやりと光を灯す虹色の球の中心部にマスターとクレイジーの姿はあった。だがラディスが見たのは言葉巧みに貶していたあの時の彼らとは違う。
――マスターとクレイジーは……それぞれの右半身と左半身が結合してしまっていたのだ。といってもその殆どがクレイジーに侵食されてしまっている。マスターの体は今まさに弟のクレイジーに取り込まれようとしていたのだ。
それでもどうにか頭は離れている。項垂れるマスターを、クレイジーが左腕を伸ばして抱きかかえるようにして眠るように彼も頭を預けている。
……兄の死を目前にしたクレイジーが狂気に駆られて貪るのを見た。重なるのは、見せられた記憶の中、弟の死を目前に絶望し、弟の肉を食らうマスターの姿。
二つでひとつ。
生まれ落ちるのは。
「……!」
何とかして引き離さないと。
「マスター!」
叫ぶ。反応はない。
「マスター!」